第22回つくばマラソン
2002年11月24日(日)
走行距離RUN:42.195km
総合タイム4時間57分
天気/気温/風 /15℃/無し
退院から25日目。大会にエントリーしてない俺はゼッケンも着けずに、大学ループのスタート地点に立っていた。
目標は交通規制が解除される4時間30分以内に、歩かず完走。本来ならキロ4分30秒で3時間台前半といきたいところだが、さすがに練習ゼロに等しいし、何より病気の身だ。とりあえず完走できれば十分か。4時間30分といえば1kmを6分30秒で走る程度の速度。相当なゆったりペースだ。序盤に無理さえしなければ必ず達成できるはず。
過去に一度ハーフマラソンを走っているが、そのときに、
「無理して飛ばさなければ10km程度なら全然疲れない」
ということを経験している。また、前日にコースをチャリで走って、概ね把握はしていた。

スタートは最後尾に並ぶ。スタートの号砲は聞こえず、気づいたらスタートしてた。
走り始めた瞬間、なぜか感動して涙が出そうになる。
「あぁ、ついに始まったんだ」
走り始めてすぐ、身体が熱くなってくる。このとき半袖Tシャツの上に長袖Tシャツを着ていたので、 長袖を脱ぎ捨てようか迷ったが、結局そのまま走った。宿舎21号棟、自分の部屋の目の前を通過。 ゼッケンを付けてないので、スタートしてしばらくは係員に止められないかソワソワしていた。 数日前、同じ研究室の同級生でつくマラ経験者であるN氏はこう言っていた。

N氏:「大丈夫大丈夫。ゼッケンつけないで走ってる人、たくさんいるから。」

・・・・
・・
・・・俺以外いねぇーじゃんか!

が、そんな心配もまもなく忘れてしまう。 とにかくとばしたい欲求を抑えて、我慢我慢で走る。とはいえ、大学のループ1周5kmを過ぎて 東大通りを北上するときには、調子に乗って前を走るランナーの集団を縫うようにどんどん抜き去っていった。
お、ブラインドランナー(全盲のランナー)だ。このランナーに比べたら、俺なんて障害者のうちに入らない。
10km通過は54分くらい。予想の50分よりは遅れたが、まだまだ余裕。
15km付近。ちょっと左足の膝が痛いような気がするが・・・まだ大丈夫だ。 北部工業地域を過ぎて突き当たりのT時を左折、南下。殺風景な直線道路が続く。

中間地点通過は1時間50分代。給水。
「あと半分ですよ〜」
う〜ん、正直かなりキツくなってきた。まだ半分あるのか・・・。

ここからは未知の領域。 過去のハーフマラソンのときはラスト数kmは脚が痛くてとても走れる状態ではなかった。死ぬほどキツかった。 今、その距離を超えて、走りつづけようとしている!
変化のない直線道路が続く。平塚線を南に横切る交差点までが非常に長く感じられた。 集団にくっついて走り、落ちてくるランナーを拾ってはまた抜き返され・・・。 そんな状態がしばらく続く。この間に膝の痛みがどんどん酷くなってくる。


25km通過。学園線に出る。 脚の痛みに耐えられなくなり、給水のついでに歩道に上がって屈伸をする。 ここから若干のup/downがあるが、ほとんど気にはならない。
30km通過。となりの中年のおっちゃんが、膝を傷め片足引きずるようなフォームで、 苦痛で顔を歪めながら走っている。
「辛いのは俺だけじゃないんだ」
と思い、奮起する。が、次第に立ち止まって屈伸をする頻度・時間が多くなってくる。
西大通に出て北上。目標の4時間30分がキツくなってきた。
あぁっ!小柄なおばーちゃんランナーが軽快な足取りで俺を抜き去っていく・・・!
学生風の女の子が歩道からバナナを差し出していたので超ダッシュで向かっていき、ひったくる。
「サンキュっ!!」
「ガンバレ〜!!」
このバナナで数分間だけ気力が持ち直したが、すぐにまたヘタれる。大学病院前の交差点を通過。「1ヶ月前はあそこに住んでたんだよなぁ」と感慨深くなってみたりする。膝の痛みが限界に達し、病院を過ぎた直後ついに歩いてしまう。この後、しばらくは走ったり歩いたりを繰り返す。沿道からたくさんの人が応援してくれているが、どうにもならない。根性で何とかなる領域を越えているのだ。あぁっ!遥か昔に抜かした一団に抜き返された!!これって結構恥ずかしい・・・。

平塚線の交差点を過ぎてしばらく行ったところで交通規制解除の4時間30分が経過してしまい、 周囲のランナーたちからもタメイキが上がる。仕方なく歩道にあがって走る。 立体交差を登り、右折、橋を下ったところの給水所でまた屈伸。 既に日が傾いて気温が下がっており、更に立ち止まることが多くなってきたことで身体が冷えてきていた。 長袖のTシャツを着ていて正解だった。 熱い紅茶を飲む。 給水所のおばちゃんとちょっと話す。
「ほらほら、あとちょっと頑張って!」
「もう脚が痛くて走れないっすよ〜」
大学が見えてきた。走ろう。 ループに入るが、歩いてるんだか走ってるんだかわからないスピードだ。
あぁっ!ゴールした奴らがとっとと帰り始めてやがる!!
ついに陸上競技場に入る。初の42.195kmが終わろうとしている。声援の大きさにはグッとくるものがあった。
が、ラストスパートなんてとてもできず、そのままヘロヘロでゴールのゲートをくぐる。

芝生の中に入る・・・とにかく座りたい。空いてる場所を見つけ、大の字になる。
「お疲れ様で〜す」
ボランティアのコが水を持ってきてくれた。その場で一気飲みしてお礼言ってコップを返す。自分がゼッケンをつけてないことは既に忘れ去っていた。そんなことどうでもよかった。 そのコも俺がゼッケン付けてないことに気づいていたようだが、かまわず水を持ってきてくれた。

記念すべき初マラソンだったが、あまりにお粗末で散々な結果だった。 練習もせず、そもそも正式エントリーさえもせずに迷惑参加し、終盤はほとんど歩いてしまうし、タイムもぼろぼろ。とりあえずゴールに辿り着いたってだけ。こんなんじゃ走ったとは言えない。達成感ほとんどゼロ。 来年はちゃんと練習して出よう。もちろんエントリーもして(たりめーだ)。


この日、俺は「怒り」だけで走っていた。
「勉強ばっかやってるから不健康になるんだ」
「病気なんだからあまり無理しないように」
そういう周囲の人々のありきたりで無責任で根拠のない先入観に満ちた頭の悪い態度・発言にほとほと嫌気がさしていた。この病気は不健康な生活が原因ではないし、病気になっても俺は何も変わってないし、気にもしてないのに、勝手に騒いで俺に対して「不幸」「不健康」のレッテルを是が非でも張りたいムカツク人々。そういうヤツに対して、

「もしお前がフルマラソン走れないのなら、お前は病人の俺よりも不健康ってことになるぞ」

そう言いたいがためだけに走った。純粋に走りたいという気持ちではなかった。とは言え、その怒りが、これまで何年もためらっていたフルマラソン出場に踏み切らせ、その結果、翌年に繋がったのも事実。

いやはや「病気のおかげ」というほかない。

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